芸道の人は「作品がすべてである」というメッセージである。スポーツや芸能界の人に対して、世間はその行状を云々するが、芸道の人にはその芸を評価することが、まずは正当であるということを、はっきりと言っている。太宰の心中の心持ちなどは、同じく芸道の人である安吾がこうして正面切って言ってくれたおかげで、能のない人間にも少しは理解できる気がする。ありがたいことだと思う。
太宰は真に惚れた女の為に自殺は決してしないと書いている。 太宰のような洞察力・自省心が極端に発達した人間は、屡々自身を追い込みすぎる。 生来の気質にその環境も相まって窮地に立たされた太宰は酒と女で舞台を整え死に至った。
太宰治情死考、不良少年とキリスト。 両方で 一時的な落ち込み(フツカヨイ)のためにここまですることは無かったと書いてる。酔った勢いで自殺なんぞせず、翌朝目覚めて 笑えれば良かったのに、 人間失格 グッド・バイ、その集大成に自殺したようなものだと。 太宰治の突飛な自殺を怒ってる、もし死にぞこなった太宰にあったら殴りそうに思う。友人が自殺したならそりゃ怒るか。 そして恋愛のために死ぬのは変、と書いてるけど、よく読んでいた有島武郎の情死をどう思ったのか気になる。
「惚れているなら現世で生きぬくがよい!」 安吾らしい。自殺するのは馬鹿者だ! ましてや男女の情愛の末、命を絶つなんて論外。その通り。失恋死?若きウェルテルがいくら悩んでも文学の中の話。酔った勢いでも、死んじゃ駄目でしょ! 太宰も馬鹿な男だ。好きでもない女と死ぬなんて。 しかし、そんなことは太宰の作品の評価に何ら影響しない。馬鹿な作家が書いた作品が馬鹿な駄作ではない。 作品は作家の日常とは別である。 作品がすべてだ。 太宰を見るのではなく、太宰の作品を見よ!
軽く書いているけど怒ってる。 必然性のない自殺、つまらない女、あれこれ太宰のスキャンダルを楽しむ世間。力士、棋士、文士を例に挙げ、一芸に秀でる者は常在戦場であると言う。そして、作品だけを、結果だけを見よと怒ってる。 しかし、太宰に一番怒ってるようだ。