「カストリ社事件」の感想
カストリ社事件
カストリしゃじけん
初出:「別冊オール読物」1948(昭和23)年9月20日

坂口安吾

分量:約25
書き出し:カストリ雑誌などゝ云って、天下は挙げて軽蔑するけれども、これを一冊つくるんだって、容易じゃないよ。まア、社長の顔を見てごらんなさい。やつれていますよ。これは、キヌギヌの疲れ、などという粋筋のものではない。生活難です。「オイ、居ると云っちゃ、いかん。居ると云っちゃ、いかん」これが社長の口癖であった。彼は必死なのである。なんとかして、カストリ社の入口に受附をつくらねばならぬ。入口の扉をあける。ビルの一...
更新日: 2019/07/12
ハルチロさんの感想

終戦後の昭和20年代を背景に著された作品です。昭和20年代は、題名通り“カストリ”時代。敗戦による荒廃、退廃の中で生まれた“カストリ”ーー低俗、粗悪ーーは、日本の暗部を表す「文化」であるかと思います。作品中の『カストリ社』は、低俗ーーエログローー記事で大衆を惹き付けるカストリ雑誌社。そこで織り成す人間模様が、個人的には、大変面白いです。昭和30年代に流行った喜劇映画のシナリオを読むかのごとく面白いです。