「嫂」の感想
あね
初出:不明

素木しづ

分量:約17
書き出し:小さなモーパッサンの短篇集を袂《たもと》に入れて英語の先生からの帰り、くれてゆく春の石垣のほとりを歩きながら辰子はおかしくってならなかった。今日ならって来た所の、フランチェスカといふわけのわからない女が、“What does in matter to me ?”と、“Not at all”以外に、なに事もいはず、常に怒ってゐるのか、真面目になってゐるのか、わからないやうな態度と表情をしてゐるのが、...
更新日: 2025/05/21
65c8aadc88adさんの感想

雙之川喜1941  兄嫁に 対する 親しく なりたいような なりたくないような 微妙な 心理描写を 描き きって 見事である。滝口入道 夢二画集 を 貸して もらって 赤い インクで あちこちに ラインが 引いてあるのを 眺めたりする。夭逝した 作家の死が 惜しまれると 感じた。 

更新日: 2022/06/09
阿波のケンさんさんの感想

思春期の少女の揺れ動く心の襞を丹念に拾った秀作である。

更新日: 2022/02/22
cdd6f53e9284さんの感想

まず、その淀みない流麗で端正な文章には感心させられた。 さらに、文末に付されていたこの小説の書かれた推定執筆年というのが、大正4年と記されているのにも驚かされた。 この時期に書かれた小説は、どれもまだまだ未成熟で、ギクシャクとした文体によって、一人よがりの思い込みを、ただただ押し付けてくるだけの小説ばかりだという自分の固定観念を、この小説は見事に打ち砕いてくれたと言ってもいい。 例えていえば、当時隆盛を誇っていたプロレタリア文学などがそれだ。 太宰治の女学生小説が現れるのは、まだまだ先の話だから、それだけでも、その先見性は十分に特筆すべきものがある。 頑な性格の兄嫁が、どのように接しても心を開いてくれないことを悩み続ける義妹の自分、この微妙な距離感を実に的確に表現していて、一気に読ませる傑出した作品だ。 物語の最後まで義姉の頑なさにどうしても近づきえない嘆きが描かれているのだが、その底には、同じ学校で生徒と教師との関係でいたほんの一時期、生徒間で無能な教師の悪評が立って窮地に立たされた彼女をかばえなかった疚しさが仄めかされていて、この小説を一方的な書き手たる自分の「残念」だけで終わらせることなく、かつて文学少女だった兄嫁の孤独までも描き得て小説に生気と奥行とを与えることができた要因だったと思う。

更新日: 2015/09/10
a5ac6a3c331fさんの感想

初めて知った小説家です。明治時代、わずか20代前半で 亡くなられているのに驚きました。この時代は、結核で亡くなる方が、なんと多いですね。 微妙な 若い女性の心理を 描いていて こういうこともあるなと 遠い自分の青春のころを思い出していました。(正直、あまり思い出せない)