ぬぬ! タイトルを見て思わず、これは面白そうだと意気込んで読み始めたのだが、読み進むうちに少し勝手が違うので、改めてタイトルを見返した。 な~んだ、「温浴」か。 「混浴」と読み間違えた。 損した、とは思わないが、そうと分かっていれば、あえて読まなかったかも。 しかし、だいぶ読み走ってしまったので、仕方なく最後まで読むことにした。 そして、当初の「な~んだ」は、見事的中した。 坂口安吾という人は、本当に無器用なくらいに生真面目だ。 太宰なら、最後にどんでん返しを仕掛けて読者を楽しませ、自分も楽しんでいるサービス精神と余裕とを感じるのだが、安吾には、その辺の遊びがまったくない。 この文章も、最後に「温浴の効用」をお座なりに解いて締めているのだが、「だから、どうした」という気分しか残らない、結局は、自己中心的なだけなのだ。 これでは、読者に思いは伝わらないし、印象にも残らない。 こういってはなんだが、太宰には、「美少女」という、凄烈な混浴小説があったぞ。 まあ、あれが読者へのサービスのために書かれたものとは思わないが、自分にとっては、しっかり「サービス」として伝わってきた。 太宰くん、きみの思いは、しっかりと受けとめたからね。あの美少女の裸身とともに。