野上豊一郎
野上氏は 懐中電灯 目録 寫生幀を もって 奈良ホテルから 正倉院の 曝涼展に 出向いた。入り口では 高官の 妻達が 執拗に 挨拶を 交わし 続けていた。光明皇后の 御齒を おさめた 小箱の 中の 真珠を 床に ぶちまけて しまったので 拾い集め 数を 確かめて もらった。バラケた さまは 入り口の 女たちの 挨拶 競争 にも 似て 収拾が つかない ようでも あった。