妾の半生涯
わらわのはんせいがい
初出:「妾の半生涯」東京堂、1904(明治37)年10月25日分量:約208分
書き出し:はしがき昔はベンジャミン・フランクリン、自序伝をものして、その子孫の戒《いまし》めとなせり。操行に高潔にして、業務に勤勉なるこの人の如きは、真《まこと》に尊き亀鑑《きかん》を後世に遺《のこ》せしものとこそ言うべけれ。妾《しょう》の如き、如何《いか》に心の驕《おご》れることありとも、いかで得て企《くわだ》つべしと言わんや。世に罪深き人を問わば、妾は実にその随一ならん、世に愚鈍《おろか》なる人を求めば...