武州公秘話
ぶしゅうこうひわ
02 跋
02 ばつ初出:「武州公秘話」中央公論社、1935(昭和10)年分量:約7分
書き出し:「蓼《たで》喰《く》う蟲《むし》」以後の谷崎君の作品は、残りなく通読しているつもりでいたが、この「武州公秘話」だけにはまだ目を触れていないのであった。谷崎好みの題材を谷崎式手法で活写しているだけで、この怪異な物語に私は驚かされはしなかったが、この老作家の老熟した近作中でも、筆が著しく緊縮していることが特に感ぜられた。のんびりしたところが皆無で窮屈そうである。似寄った変型愛慾の描写にしても、青年期の...