私の竜之助感
わたしのりゅうのすけかん
――舞台上の愛人――
――ぶたいじょうのあいじん――分量:約3分
書き出し:戀は盲目だとか、昔からの諺である。相手が惚れた男なら、あばたもえくぼに見えるように、所詮、戀人は批評の外の存在である。私の「大菩薩峠」に對する氣持も、正直に言えばその通りで、全く批評を超えたものである。がしかし、私がかほど戀する「机龍之助」とは、原作者がいうところの机龍之助とは違うかも知れない。或は小説が「大菩薩峠」の作者には思いも及ばない龍之助であるかも知れない。何となれば、私の謂う「机龍之助」...