花束の虫
はなたばのむし
初出:「ぷろふいる」ぷろふいる社、1934(昭和9)年4月号分量:約47分
書き出し:一岸田直介《きしだなおすけ》が奇怪な死を遂げたとの急報に接した弁護士の大月対次《おおつきたいじ》は、恰度《ちょうど》忙しい事務もひと息ついた形だったので、歳若いながらも仕事に掛けては実直な秘書の秋田《あきた》を同伴して、取るものも不取敢《とりあえず》大急ぎで両国《りょうごく》駅から銚子《ちょうし》行の列車に乗り込んだ。岸田直介——と言うのは、最近東京に於て結成された瑪瑙座《めのうざ》と言う新しい劇...