足の裏
あしのうら
初出:「探偵文学」探偵文学社、1935(昭和10)年3月号分量:約14分
書き出し:一さて、私がいまお話ししようというお話の主人公は、景岡秀三郎——という景岡浴場の主人なのですが、その人の色々変ったお話と、それに関連して探偵小説的な一つのトリックといったようなものを御紹介しようと思うのです。浴場の主人——などというと如何にも年輩の、シッカリした男を連想しますけど、景岡は私立大学を出たばかりの、まだ三十には二三年|間《ま》のある青年でした。大学を出たばかりの青年がお湯屋の主人なんて...