「穴」の感想
あな
初出:「新青年」博文館、1938(昭和13)年9月号

蘭郁二郎

分量:約11
書き出し:毎日毎日、気がくさくさするような霖雨《ながあめ》が、灰色の空からまるで小糠《こぬか》のように降り罩《こ》めている梅雨時《つゆどき》の夜明けでした。丁度《ちょうど》宿直だった私は、寝呆《ねぼ》け眼《まなこ》で朝の一番電車を見送って、やれやれと思いながら、先輩であり同時に同僚である吉村君と、ぽつぽつ帰り支度にかかろうかと漸《ようや》く白みかけた薄墨《うすずみ》の中に胡粉《ごふん》を溶かしたような梅雨の...