遍路
へんろ
初出:「時事新報」1928(昭和3)年1月15日~17日分量:約8分
書き出し:那智《なち》には勝浦《かつうら》から馬車に乗つて行つた。昇り口のところに著いたときに豪雨が降つて来たので、そこでしばらく休み、すつかり雨装束《あましやうぞく》に準備して滝の方へ上つて行つた。滝は華厳《けごん》よりも規模は小さいが、思つたよりも好かつた。石畳《いしだたみ》の道をのぼつて行くと僕は息切れがした。さてこれから船見《ふなみ》峠、大雲取《おほくもとり》を越えて小口《こぐち》の宿《しゆく》まで...