我牢獄
わがろうごく
初出:「女學雜誌 三二〇號」女學雜誌社、1892(明治25)年6月4日分量:約13分
書き出し:もし我にいかなる罪あるかを問はゞ、我は答ふる事を得ざるなり、然《しか》れども我は牢獄の中《うち》にあり。もし我を拘縛《こうばく》する者の誰なるを問はゞ、我は是を知らずと答ふるの外なかるべし。我は天性|怯懦《けふだ》にして、強盗殺人の罪を犯すべき猛勇なし、豆大の昆虫を害《そこな》ふても我心には重き傷痍《しやうい》を受けたらんと思ふなるに、法律の手をして我を縛せしむる如きは、いかでか我が為《な》し得る...