何気なく続くとりとめもない会話と美しい情景の対比が面白い。 桜は、こぼれるように咲いていた。 最後の一行で目を閉じて想像して、見えない春を感じる。 穏やかな気持ちと寂しい気持ちが同時に押し寄せた。
太宰も、産まれた日付とその亡骸が見つかった日付が同じというに、当然知るよしもないが。波乱に満ちた生涯であれど、こうして家族水入らず、桜を見ていたことに何だか驚いた。私がいかに偉人たちに対して偏った印象でいるか。偉人である前に、子であり、親であり、配偶者であり、元より人間であろう。それ故に悩むのである。苦しむのである。人間というものは。