寺田寅彦
自然科学の中でも、いわゆる「すぐには役に立ちそうもない」しかし大いなる好奇心を持って、これに没頭できるのを僅かながらの拠り所とする大学院1年生の私にとって、それも将来きっと金にならぬであろうと少なくとも現時点ではそう思われる学問との闇雲なる共闘をしている今、この文章に出会えたということは非常に幸運であるに違いないし、極めて勇気付けられたと言えるかもしれない。最後に描写された「遊蕩児」の心境こそ、今私の抱く人生観に酷似していると思いたくなるほどに驚くほど共感できるものだったからである。