「科学に志す人へ」の感想
科学に志す人へ
かがくにこころざすひとへ
初出:「帝国大学新聞」1934(昭和9)年4月30日号

寺田寅彦

分量:約10
書き出し:新学年開始のこの機会に上記の題で何か書けという編輯員《へんしゅういん》からの御注文である。別に腹案もないからと一応御断りしたが、何でもいいから書けといわれる。自分の学生時代の想い出のようなものでもいいからといわれるので、たださしあたり思いつくままを書くことにする。上の表題は当らない。単に「追憶」とでもすべきであろう。自分の学生時代と今とでは、第一時代が変っている。その上に自分の通って来た道は自分勝...
更新日: 2017/06/10
15379b3e710dさんの感想

自然科学の中でも、いわゆる「すぐには役に立ちそうもない」しかし大いなる好奇心を持って、これに没頭できるのを僅かながらの拠り所とする大学院1年生の私にとって、それも将来きっと金にならぬであろうと少なくとも現時点ではそう思われる学問との闇雲なる共闘をしている今、この文章に出会えたということは非常に幸運であるに違いないし、極めて勇気付けられたと言えるかもしれない。最後に描写された「遊蕩児」の心境こそ、今私の抱く人生観に酷似していると思いたくなるほどに驚くほど共感できるものだったからである。