「味の素」発明の動機
あじのもとはつめいのどうき
初出:「人生化学」龜高徳平著、丁未出版社、1933(昭和8)年3月分量:約4分
書き出し:「味の素」発明の動機池田菊苗余が化学を修め始めたるは明治十三年余が十七歳の時にして、主としてロスコー、ファウン=ミルラー、ミューアなどの英書に就きて斯学の初歩を講じたるものなるが、多くもあらぬ小遣銭は尽く薬品器具の購入に費し、家人の迷惑をも顧みず酸類にて衣服や畳に孔を穿ち又硫化水素などを弄びて実験を行ふを唯一の楽とせり。余は当時大阪衛生試験所長兼造幣局技師たりし村橋次郎先生に就きて毎週一回講学上の...