最小人間の怪
さいしょうにんげんのかい
――人類のあとを継ぐもの――
じんるいのあとをつぐもの初出:「にっぽん」1949(昭和24)年9月号分量:約5分
書き出し:この秘話《ひわ》をしてくれたN博士も、先々月この世を去った。今は、博士の許可を得ることなしに、ちょっぴり書き綴《つづ》るわけだが、N博士の霊魂なるものがあらば、にがい顔をするかもしれない。以下は、N博士の物語るところだ。私は大正十五年十二月二十六日の昼間、霧島の山中において、前代未聞の妖怪に出会った。当時私は、冬山における動物の生態研究をつづけていたのだ。私はキャンプを張り、幾週間も山中で起き伏《...