鹿踊りのはじまり
ししおどりのはじまり
初出:「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」盛岡市杜陵出版部・東京光原社、1924(大正13)年12月1日分量:約17分
書き出し:そのとき西のぎらぎらのちぢれた雲のあいだから、夕陽《ゆうひ》は赤くななめに苔《こけ》の野原に注ぎ、すすきはみんな白い火のようにゆれて光りました。わたくしが疲《つか》れてそこに睡《ねむ》りますと、ざあざあ吹《ふ》いていた風が、だんだん人のことばにきこえ、やがてそれは、いま北上《きたかみ》の山の方や、野原に行われていた鹿踊りの、ほんとうの精神を語りました。そこらがまだまるっきり、丈高《たけたか》い草や...