「競漕」の感想
競漕
きょうそう
初出:「新思潮」1916(大正5)年6月

久米正雄

分量:約43
書き出し:一毎年春季に開かれる大学の競漕《きょうそう》会がもう一月と差し迫った時になって、文科の短艇《ボート》部選手に急な欠員が生じた。五番を漕《こ》いでいた浅沼が他の選手と衝突して止《や》めてしまったのである。艇長の責任がある窪田《くぼた》は困った。敵手の農科はことにメンバアが揃《そろ》っていて、一カ月も前から法工医の三科をさえ凌《しの》ぐというような勢いである。翻《ひるがえ》って味方はと見ればせっかく揃...
更新日: 2021/08/27
ハルチロさんの感想

本作品は題名の通り大学のボートレースが題材となっている。この作品の主人公は、恐らく、作者の出身校であろう。他校との競争ではなく、同大学の他学部との競争であるところが興味深いです。試合日までの選手の心理、試合中の選手の心理、試合後の選手の心理、各々が巧みに描写されているので、読んでいるこちらも、競技現場に居合わせるかのように感じました。学生時代にボート競技の経験者が読んだら、私以上に情景を思い浮かべられることでしょう。