落葉日記
おちばにっき
初出:「婦人公論 第二十一巻第六号~第二十二巻第五号」1936(昭和11)年6月1日~1937(昭和12)年5月1日分量:約278分
書き出し:一の一郷田梨枝子《がうだりえこ》は、叔母と並んで東京駅のプラット・フォームに立つてゐる。そして、今着いたその汽車から降りて来る筈の父親の顔をちつとも覚えてゐないのである。「すぐ教へてね、叔母さま……。いやだわ、いろんな人が顔を突き出して……」「ああ、お待ちなさいつてば……。あたしだつて間違ふかも知れないよ」心細い話だが、これも十年会はないうちに、兄がどんなに変つてしまつたか、さつぱり見当がつかなか...