衣食住雑感
いしょくじゅうざっかん
初出:「文芸春秋 第四年第三号」1926(大正15)年3月1日分量:約4分
書き出し:衣食住雑感岸田國士どんな着物を着たいなどゝ思つたことは勿論ないが、こんなものを何時まで着てゐるのかなあと思つたことは度々ある。外に出る時は洋服、家の中では和服に限るとは誰も云ふことだが、雨上りのぬかるみを高下駄でこねゆく風情もまた一興である。これは皮肉ではない。ぢつとしてゐる時ズボンの股ほど気になるものはあるまい。しかし、和服を着て椅子に腰をかけると、何となく心細い。裾から風がはひるやうな気がする...