名人地獄
めいじんじごく
初出:「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日分量:約391分
書き出し:消えた提灯《ちょうちん》、女の悲鳴「……雪の夜半《よわ》、雪の夜半……どうも上《かみ》の句が出ないわい」寮のあるじはつぶやいた。今、パッチリ好《よ》い石を置いて、ちょっと余裕が出来たのであった。「まずゆっくりお考えなされ。そこで愚老は雪一見」立ち上がったあるじは障子を開けて、縁の方へ出て行った。「降ったる雪かな、降りも降ったり、ざっと三寸は積もったかな。……今年の最後の雪でもあろうか、これからだん...