「演劇・法律・文化」の感想
演劇・法律・文化
えんげき・ほうりつ・ぶんか
初出:「東京朝日新聞」1934(昭和9)年3月14、15、16、17日

岸田国士

分量:約15
書き出し:芸術家擁護の現行法「芸術」と「法律」とはそんなに縁の遠いものではないといふことを、私は近頃いろいろな機会に感じるのであるが、この両者の接近が、どうかすると、一国の精神文化の水準を示してゐるのではないかとさへ思はれることがある。これは決して、芸術家にも法律の知識が必要であるとか、法律家も芸術に対するひと通りの鑑賞眼を具へてゐてもよからうとかいふやうな問題ではなく、一国一時代の民族的活動が、芸術なる部...
更新日: 2019/09/06
ハルチロさんの感想

本作品は、題名を見るとかなり広範な“文化論”の様に思えました。しかし、読んでみると、昭和初期に改正された著作権法を注目し、その目的条文(第一条)中に列挙された著作権の及ぶ著作物の範囲や定義について論じられています。“文芸学”に精通する著者らしい解釈や定義は、正鵠を射ていると思われる箇所が多く見られます。特に、著作権法の規範となった条約(フランス語)の語句の解釈、フランスにおける著作権に係る判例は、興味を引かれました。