「陸軍士官から」の感想
陸軍士官から
りくぐんしかんから
初出:「昭和七年新文芸日記」新潮社、1931(昭和6)年11月20日

岸田国士

分量:約2
書き出し:陸軍士官から岸田國士日清日露両戦役をはさんで、軍人の家に生れ育つた私は、「大きくなつたら何になる」といふ問題を、至極簡単に考へてゐた。友達が中学にはひる頃、私は幼年学校にはひり、それから十年間、全く、世の中と没交渉な生活を送つた。自分の気質が、軍人には向かないといふことを、そろそろ気づきはじめる時代には、軍人勅諭の五ヶ条が、頭にしみ込んでゐた。さういふ生活のなかで、私は、仏蘭西語の教科書を通して、...
更新日: 2019/08/21
ハルチロさんの感想

作者の生い立ちと東京帝国大学入学までの経緯が簡潔にかかれた“履歴書”的著述である。本文の終わり方が少々中途半端なように思える。続きがあるのだろうか。本文最後に『大杉栄』氏との会合を考えていたが、実現されていない旨の記述がある。著者の帝大入学の時期などを考えるに、著者は、その後『大杉栄』氏に会うことは叶わなかったかもしれない。『大杉栄』氏は、1923年9月に「甘粕事件」により落命されている。些末なことであるが、著者が『大杉栄』氏に会えたかどうかを知りたくなる。