「従軍五十日」の感想
従軍五十日
じゅうぐんごじゅうにち
初出:「文芸春秋 第十六巻第二十一号」1938(昭和13)年12月1日、「文芸春秋 第十七巻第一号」1939(昭和14)年1月1日、「文芸春秋 第十七巻第三号」1939(昭和14)年2月1日、「文芸春秋 第十七巻第五号」1939(昭和14)年3月1日、「文芸春秋 第十七巻第七号」1939(昭和14)年4月1日

岸田国士

分量:約193
書き出し:前記この記録は昨年九月から十月にかけて、いはゆる「従軍作家」の一人として中支戦線のところどころを視察した結果、生れたものであるが、もともとこの種のノートを発表することによつてわれわれの任が果されたとは毛頭考へてゐない。しかし、自分の僅かばかりの見聞のなかゝら、国民全体に是非知つてもらはねばならぬと思ふことは、今日許される範囲でとりあへずそれを伝へる義務があると信じたので、いくぶん個人的な見方にすぎ...
更新日: 2024/04/11
19双之川喜41さんの感想

 著者が 派遣先の 戦地で 背嚢(はいのう)から 角砂糖を とりだして 現地の 幼子に 与えると もっとくれと せがまれたとの 情景が 記されているけど その数年後に 幼い 私は 満州からの 引き揚げの 途中で 角砂糖を 同様に 恵まれたことを いまだに 鮮明に 思い出す。それから 半世紀以上過ぎた 今でも あの 真っ白な 角砂糖を 見ると 鼻が つんとなる。私は もっとちょうだいと 言い出せずに うじうじしていた。はっきり 言えば 良かった。

更新日: 2023/03/13
ノイジージジーさんの感想

戦争や軍や統治に批判を加えているのに驚かされる。今読んでも色褪せていない。武漢攻略までの勝ち戦ゆえの余裕が検閲をゆるめたのか。

更新日: 2019/08/20
ハルチロさんの感想

この作品は、日支事変(日中戦争)の緒戦である第二次上海事変終盤に戦地に入り、記述されたものです。作品前半の河川遡上時の戦闘場面や匪賊(国民革命党軍のゲリラ部隊)との野戦場面等は、体験した者でなければ書くことが出来ない記述(例えば、日本軍の部隊配置や匪賊のチェコ製機関銃の使用など)が見られ、個人的には、大変興味深く読めた。作品中盤の日本軍の宣憮工作と中国進出の欧米の植民地化工作の比較、作品終盤の当該事変(戦争)対する作者の見方や作者の考える在り方は、陸軍士官学校出身として“軍人”の面と大学で教鞭をとる文学者として“文人”の面とを持つ作者だから書けるものであると思う。素晴らしい著述と思う。