競馬と男、とくれば下らない賭博中毒の男の破滅物語か何かだろうと読んでみると、これが意外な方向へ転がり出す。病める一代の息が詰まるような痛々しい描写に耐えかねているうち、しかし短篇だし最後まで頑張ろうと読んでいくと、あっさりと病人は退場し、すっかり忘れていた競馬の話が出てくる。ここで元気を取り戻し、最後は男の嫉妬と破滅の描き方に感心する。 短い中に上手く起伏を作っているし、読者に与える苦痛の感覚も上手に抑制できているし、最後にはちょっとしたカタルシスもある。佳い小品だと思う。
当時の競馬の実況を想起させる描写には、非常に引き込まれました。 主人公の人間模様も“博打”に嵌まる典型のようにも感じられ、この小説には、モデルがいるのではないか、と思わせられる程、リアリティーのある作品でした。大変面白いです。
女と競馬はある時期のあちきの憧れでもあった。あの淀競馬場でオケラ街道でタケシバオーの連単馬券を売る出目表売りの口上につられて、デタラメ承知で買った頃、西山に沈む夕日が大きくオレンジ色から赤く燃え美しかった。その後北海道旅行で、札幌競馬場まで行ったことが懐かしい。 あちきの出目は3と6宇佐美斎の星占いの出目だった。 女は語れないが織田作之助の小説は仕掛けが単純でも時代を語りおもしろい。
織田作の小説で1番好きかも知れません。最後の盛り上がりは何度読んでも涙が溢れそうになります。