盛事があったから太郎兵衛は死罪を免ぜられたのか、はたまた子供たちの願いが届いたのか…となると読書前と後とで印象が変わった。いちは大人であり公僕である奉行たちに、特に佐々に警戒心を抱かれてしまった感じだ。 だが妹や弟たちの自然な振る舞いで場が緩んだあとの「お上のやることに間違いはございますまいから」という一句は、いちが、桜町天皇の大嘗会のことを計算に入れていて、そこまではまつや長太郎にも明かさず黙って引き連れてきたのではと思った。奉行や後ろにいた城代はその通りにせざるを得ない場を、小娘のいちに作られていたことになるし、これ程強烈な一撃はない。 母の様子を見に来てくれる祖母の話の立ち聞きで色んなことを知ったにせよ、誰かに入れ知恵された訳では決して無い。ただ願書を書いてスジを通す時間もなかったし、本当はいちも怖かったと思うが、主犯が逃げたからという事で死罪になる父の罪状に常に憤りを持っていて、そしてはっきり勝算が見つかったからの自信だったのだろうな。
「お上の事には間違いはございますまいから」 十六歳の長女は 責め道具が並べられた白洲で 兄弟と共に 父親の助命を直訴する。 読んで涙しない人は 滅多にいないかもしれないと感じた。
「お上のすることに間違いはないでしょうから」というセリフを見て、複雑な気持ちになりました!