雪の日
ゆきのひ
初出:「文学界 第三号」1893(明治26)年3月31日分量:約10分
書き出し:見渡すかぎり地は銀沙を敷きて、舞ふや蝴蝶《(こてふ)》の羽《(は)》そで軽く、枯木も春の六花《(りくくわ)》の眺めを、世にある人は歌にも詠み詩にも作り、月花に並べて称《(たた)》ゆらん浦山《(うらやま)》しさよ、あはれ忘れがたき昔しを思へば、降りに降る雪くちをしく悲しく、悔《(くい)》の八千度《(やちたび)》その甲斐もなけれど、勿躰《(もつたい)》なや父祖累代|墳墓《みはか》の地を捨てゝ、養育の恩...