熱い砂の上
あついすなのうえ
初出:「週刊朝日 第十六巻第二号」朝日新聞社、1929(昭和4)年7月14日分量:約8分
書き出し:一駆け出した、とても歩いたりしてはをられなかつたから——砂が猛々しく焦《や》けてゐて誰にも到底素足では踏み堪《こた》へられなかつた。「熱い/\!」「素晴しい暑さだ!」「競争!競争!波打ちぎはまで——」三人の若者と二人の娘が脱衣場から飛び出て、砂を踏んで見ると、熱さに吃驚して、ピヨン/\と跳ねあがりながら夢中で波打ちぎはを目がけて駆けて行つた。「厭々々!誰か——」海老茶の水着をきた娘が悲鳴をあげた。...