寄生木と縄梯子
やどりぎとなわばしご
初出:「婦人サロン 第二巻第十二号」文藝春秋社、1930(昭和5)年12月1日分量:約6分
書き出し:「ヤドリ木——知つてゐますか?」「……知らんのう、実物を見たら、あゝ、これか——と思ふかも知んないが……ヤドリ木?聞いたこともない。」誰に訊ねても同じ返答ばかりであつた。私は、小屋を出てから同じ質問を若い木挽にも訊いた。山頭《やまがしら》の炭焼の老人にも訊いた。鈴を鳴して橇道を滑走して来る橇の一隊をさへぎつて、皆なに訊いたが、一様に首をかしげて顔を見合せてゐるだけだつた。「有りがたう——兎も角僕は...