「鎧の挿話」の感想
鎧の挿話
よろいのそうわ
初出:「週刊朝日 第十八巻第十九号」朝日新聞社、1930(昭和5)年10月26日

牧野信一

分量:約4
書き出し:五人力と称ばれてゐる無頼漢の大川九郎が今日はまた大酒を呑んで、店で暴れてゐる——と悲しさうな顔で居酒屋の娘が、私の家に逃げて来た夕暮時に、恰度私の家では土用干の品々を片附けてゐたところで、そして私は戯れに鎧を着、鉄の兜を被つて、ふざけてゐたところだつた。私は、喧嘩や力業には毛程の自信もなかつたが、「怪しからん奴だ!」と呟いて、そのまゝ居酒屋へ赴いた。「妙《たへ》公、出て来い、さあ、出て来い!」九郎...
更新日: 2025/02/21
65c8aadc88adさんの感想

雙喜  力自慢の 九郎が 大酒を 渇喰らって 飲み屋で 暴れている との 注進で たまたま 土用の 虫干しで 武具を 日にさらし ふざけて 鎧兜を 身につけて いた ところに 知らせが 入ったので 牧野は そのままの 装束で 騒ぎを 鎮めに 駆けつけた。腕力には 自信が 無いけど 偶然 成敗してしまう。仕返しを 怖れて 天狗の 仕業だと 嘘話しを ことさら 広めたりたり するという 斗酒 なお 辞せずの 頃の 魂消るような 話しである。自身は ストレスを うまく 処理できず 後年 自死してしまい 痛ましい 結末を 向かえたと きく。著者の 才能を 心から 惜しむ。