「肉桂樹」の感想
肉桂樹
にっけい
初出:「若草 第十巻第二号」宝文館、1934(昭和9)年2月1日

牧野信一

分量:約14
書き出し:一枳殻《からたち》の生垣に、烏瓜の赤い実が鮮やかであつた。百舌鳥が栗の梢で、寒空を仰いで激しく友を招んでゐた。武兵衛さんが、曲つた腰を伸して、いつまでも、鳥の声の方を見あげてゐた。彼の口から立ちのぼる呼吸《いき》が、ふわふわとする煙であつた。——武兵衛さんのことを皆は、武《ぶう》さんと称び慣れてゐた。武さんは、蜜柑山の向方の村から、馬を曳いて、僕のうちの母家のまはりの野菜畑やら、果樹や竹藪の手入れ...
更新日: 2025/10/06
艚埜臚羇1941さんの感想

  わたしの 思い出では 肉桂は 子供達 相手の 駄菓子屋さん では セロファン紙に 染み込ませた ものを 売っていた。  父親は 社長 であるけど 牢に つながれていた。その息子の 金公は 嫌な奴で 肉桂を 貰いながらも 太いところは 自分で 取り ほそいのばかり よこしやがると 難癖を 付ける 虐めっ子だったことが 思い出される という。あの 香りが 立ちのぼる 香気に 充ちた 上質な 文章と 感じた。