「フアウスト」の感想
フアウスト
ファウスト
初出:「モダン日本 第五巻第四号」文藝春秋社、1934(昭和9)年4月1日

牧野信一

分量:約4
書き出し:博士《マヂステル》フアウストは、哲学、医学、法律、神学その他あらゆる学問といふ学問を研究し尽してしまつて、もうその他には何もないのか?とおもふと、急にがつかりして、死んでしまはうと決心しました。ところへメフイストといふ悪魔が現れて、女道楽をすゝめます。なるほどそいつは気がつかなかつた!と博士は死ぬのを見合せて町へ出ると、一人の娘を見るがいなや即座に魂を奪はれました。マルガレツテといふ帽子店の売子で...
更新日: 2018/08/14
いちにいさんの感想

「女道楽」とは面白い訳だ。ドイツ語では何と言うのだろう? 一般的には誉められた言葉では無さそうだが、ファウスト博士にとっては死ぬことを思い止まらせるほどの魔力を持った言葉だった。 (そもそも果たして、学問を極めることは、恋や愛とかを断つことなのか?という疑問が残る。仏教の世界では女人禁制であるが、特に西洋世界ではギリシアローマ文明あたりのエロースが美の象徴で、芸術、哲学、その他の分野でも影響与えているイメージだ。) その女道楽を薦めたのが、メフィストという悪魔で、物欲を利用して娘の気を引く作戦をたてるが、何とも人間的ではないか!悪魔なら催眠術でも何でもかければ、手っ取り早いのに。娘をまず罪人にしなければ、という悪魔業のノルマでもあるらしい。