牧野信一
紙芝居師が 日に何度もやってくるような 路地の奥に 男は住んでいて 昆虫採集を趣味にしているけど 自分は不器用なためにうまく取れないので 子供たちをそそのかして 昆虫に値段をつけて 採集を 競わせ いわば下請けに出しているのである。 電車の運転手の 娘で マネキンもやっている子から 恋人の 品定めを頼まれるけど なかなか煮えきれない。 始まりの拍子木が派手で 終わりの拍子木は 聞いたことがないなどと 言い訳をしている。