「真夏の朝のひとゝき」の感想
真夏の朝のひとゝき
まなつのあさのひととき
初出:「新潮 第三十巻第九号」新潮社、1933(昭和8)年8月19日

牧野信一

分量:約21
書き出し:芝区で、二本榎の谷間に部屋を借りてゐた。既に七月の夢が消えてゐた。寺院の鐘の音が霧の深い崖下に渦を巻いた。妻子は私の因循にあきれて、海辺の故郷に赴いてゐた。私は寺院の鐘の音では夢を破られなかつたが、直ぐの窓下で芝居の幕あきの調子で鳴る紙芝居師の拍子木の響で、毎朝目を醒されると、別に自分を役者にも観客にもなぞらへるわけでもないのであつたが、やはり何かしら遊戯的気分に誘はれるのであつた。それが聞える間...
更新日: 2020/11/11
19双之川喜41さんの感想

 紙芝居師が 日に何度もやってくるような 路地の奥に 男は住んでいて  昆虫採集を趣味にしているけど  自分は不器用なためにうまく取れないので  子供たちをそそのかして 昆虫に値段をつけて  採集を 競わせ  いわば下請けに出しているのである。 電車の運転手の 娘で マネキンもやっている子から  恋人の 品定めを頼まれるけど  なかなか煮えきれない。 始まりの拍子木が派手で 終わりの拍子木は 聞いたことがないなどと 言い訳をしている。