「夜見の巻」の感想
夜見の巻
よみのまき

「吾が昆虫採集記」の一節

「わがこんちゅうさいしゅうき」のいっせつ初出:「文藝春秋 第十一巻第十二号」文藝春秋社、1933(昭和8)年12月1日

牧野信一

分量:約27
書き出し:一私は夏の中頃から、鬼涙《きなだ》村の宇土酒造所に客となつて膜翅類の採集に耽つてゐた。私は碌々|他人《ひと》と口を利くこともなく、それで誰かゞ私の無愛想な顔を蜂のやうだと嘲つたが、全く私は眼玉ばかりをぎろ/\させて口を突《とが》らせ、蜂のやうに痩せて、あたりの野山を飛びまはつてゐた。或る朝私は靄の深い時刻に起き出て、先達うちから山向うの柳村の鎮守社の境内に半鐘型のスヾメ蜂の巣を発見しておいたので、...
更新日: 2025/05/04
65c8aadc88adさんの感想

雙之喜川1941 足柄郡 曽我村 五郎丸 字 夜見 辺りでの 馬と 熊ん蜂と 著者の 引き起こした とんだ 騒ぎを 綴った ものである。村人達は 駄馬を てなづけたとして 先生に 一目置く けど それは はた目に すぎず 馬と 先生は 反目しあっている。こともあろうに 雌馬を 見かけると みずからの 廃齢を ものともせずに 武者 振り つく 挑みかかる やる気だけは 満々な 畜生の 無礼にも 腹を 立てている。まあ 読み手に とっては もらい 泣きの 世界 でしょう けど。 駄馬が 雀蜂の 巣に 突っ込んでしまったあと なんとなく 両者が 仲良くなったような 微妙な 関係になるのも 微苦笑もの である。著者は 若くして 自死に 走ってしまうけど 文学の 高みに 執着 し過ぎたと 想えて しかたがない。