「競馬の日」の感想
競馬の日
けいばのひ
初出:「祖国 第二巻第十二号」學苑社、1929(昭和4)年12月1日

牧野信一

分量:約25
書き出し:一眠つても眠つても眠り足りないやうな果しもなくぼんやりした頭を醒すために私は、屡々いろいろな手段を講じる。頭がぼんやりしてゐると私は、いつも飛んでもない失敗を繰り返す癖に怖れをもつてゐたからである。「うんうん——と、はつきり点頭いてゐたから約束通り僕は今迄停車場で待つてゐたんですよ。がつかりしちやふな、ほんとうに未だ寝てゐるなんて酷いや!」森だ!と私は、吃驚りして寝台から飛び降りた。が、思ひ返すと...
更新日: 2019/05/23
ハルチロさんの感想

愚生のごとき俗物が、本作品の題名だけに興味を示して読むと、肩透かしを食らう作品ではなかろうか。本作品の背景には、確かに“競馬”の記述があり、その“競馬”は、本作品の大事な背景を担っている。だが、その“競馬”は『賭け事』、『博打』としての性格を全面に打ち出さず、本作品の織り成す人間模様の“小道具”であると感じる。 また、本作品は、私的には「夢幻的描写」というか「舞台劇的描写」というか、あまり馴染みにくい描写である。ただ、こういう構成の作品は、詩的感覚を持った読者には、はまるかも知れない。