葬列
そうれつ
初出:「明星 十二号」1906(明治39)年12月分量:約62分
書き出し:久し振で帰つて見ると、嘗《かつ》ては『眠れる都会』などと時々|土地《ところ》の新聞に罵られた盛岡も、五年以前とは余程その趣を変へて居る。先づ驚かれたのは、昔自分の寄寓して居た姉の家の、今裕福らしい魚屋の店と変つて、恰度自分の机を置いた辺《あたり》と思はれるところへ、吊された大章魚《おほだこ》の足の、極めてダラシなく垂れて居る事である。昨日二度、今朝一度、都合三度此家の前を通つた自分は、三度共此大章...