私信
ししん
初出:「都新聞 第一九四三七号」1941(昭和16)年12月2日分量:約2分
書き出し:叔母さん。けさほどは、長いお手紙をいただきました。私の健康状態やら、また、将来の暮しに就《つ》いて、いろいろ御心配して下さってありがとうございます。けれども、私はこのごろ、私の将来の生活に就いて、少しも計画しなくなりました。虚無ではありません。あきらめでも、ありません。へたな見透しなどをつけて、右にすべきか左にすべきか、秤《はかり》にかけて慎重に調べていたんでは、かえって悲惨な躓《つまず》きをする...