雪渡り
ゆきわたり
初出:「愛国婦人」1921(大正10)年12月号、1922(大正11)年1月号分量:約18分
書き出し:雪渡りその一(小狐《こぎつね》の紺三郎《こんざぶろう》)雪がすっかり凍《こお》って大理石よりも堅《かた》くなり、空も冷たい滑《なめ》らかな青い石の板で出来ているらしいのです。「堅雪《かたゆき》かんこ、しみ雪しんこ。」お日様がまっ白に燃えて百合《ゆり》の匂《におい》を撒《ま》きちらし又《また》雪をぎらぎら照らしました。木なんかみんなザラメを掛《か》けたように霜《しも》でぴかぴかしています。「堅雪かん...