夢の総量は空気であった
坂口安吾
我が青春の書。初読から50年余りを経た今になっても、涙が零れそう。 ワタシハアオゾラヲミタ。アオゾラハワタシニシミタ。 ワタシハルリイロノナミニムセブ… 冒頭の研ぎ澄まされた言葉の一つ一つが、まるでナイフのように皮膚を撫でます。 故郷はみずみずしい風景に溢れていながら、少女を見出だすことが出来ず、やるせない悲しみを抱えたまま、癌におかされた姉を見舞います。しかし悲しみもまた風景でしかないのです。 ワカレノミニガカッタ。結末のこの一文まで研ぎ澄まされた緊張が続きます。青春の書に違いありません。