本文が文語体なので、読み始めは、取っ付きにくかったものの、読み進むうちに、話の面白さに引っ張られて、いつの間にか文語体の小説であることを忘れてしまった。 秀才でならした田舎の少年が、郷里の学校では飽きたらず、もっと上の学校を目指して上京するが、大切な学資金を紛失してしまい、親元にも話せず、植字工となって懸命に働き学資を稼ぐ。 新たな後援者が表れるまで、結構な苦労続きのはずなのだが、これといった暗さや鬱屈感がない。 意外と爽やかな読後感の原因は、多分この善良さにある。 少年を取り巻く周囲の人々もすべて善良でストレスというものとは無縁のストーリー展開、もし唯一あるとすれば、少年の主人公が、周りから優秀だと褒めそやされて、すぐに天狗になってしまうあたりくらい、まあ、それにしたって、随分キュートな思い上がりにすぎないが。 あっ、そうそう、惹かれた理由はもうひとつ、饗庭篁村という名前に惹かれた。字体が素敵だ。
想定外によかった。 かわいくって素敵なお話しでしたよ