「愉しい夢の中にて」の感想
愉しい夢の中にて
たのしいゆめのなかにて
初出:「桜 第二巻第三号」近藤書店、1934(昭和9)年4月1日

坂口安吾

分量:約5
書き出し:昨夜、ちやうど河田の夢を見た。私は見知らない藁屋根のある農家の庭をぶら/″\してゐた。旅先であつたらしい。ひどい旅愁に苦しめられてゐたのである。どつちを眺めていいのか分らなかつたり、どの見知らない方角を眺めることも苦しかつたり怖ろしかつたり、身体が蒼白く痩せてしまひさうな心細い旅愁であつた。すると、暗い樹木の中から、まつさをな死の顔をした人間が黙つて私に近づいてきた。見ると死んだ河田であつた。幽霊...
更新日: 2020/08/14
496b7f29770aさんの感想

安吾先生らしい、河田氏への愛情を感じる、哀悼の意が込められた文章であった。 河田氏は「光」のような存在だと思った。そして「生きる人間の楽しさ」となって残る……。先生のよき理解者であったろう河田氏の優しさが、じんわりと伝わってくる。 愉しい夢だと記してはいるが、表には見せない先生の悲しみが伝わってくるようで、何だか此方まで泣けてくる。