大塚楠緒子
おおつかなおこ
初出:「婦人画報」1915(大正4)年10月分量:約11分
書き出し:もうやがて二昔《ふたむかし》に近いまえのことでした。わたしは竹柏園《ちくはくえん》の御弟子《おでし》の一人《ひとり》に、ほんの数えられるばかりに、和歌をまなぶというよりは、『万葉集』『湖月抄』の御講義を聴講にいっておりました。すくなくても十人、多いときは二、三十人の人たちが、みんな熱心に書籍の中へ書入れたり、手帖《ノート》へうつされたりしていました。男子も交る時もありましたが、集りは多く女子《おん...