「ひどい煙」の感想
ひどい煙
ひどいけむり
初出:「オール讀物」1955(昭和30)年7月号

久生十蘭

分量:約25
書き出し:一飯倉の西にあたる麻布勝手ヶ原は、太田道灌が江戸から兵を出すとき、いつもここで武者揃えをしたよし、風土記《ふどき》に見えている。大猷院殿《たいゆういんでん》の寛永の末ごろは、草ばかり蓬々とした、うらさびしい場所で、赤羽の辻、心光院の近くまで小山田《おやまだ》がつづき、三田の切通し寄り、菱《ひし》や河骨《こうぼね》にとじられた南|下《さが》りの沼のまわりに、萱葺きの農家がチラホラ見えるほか、眼をさえ...