顎十郎捕物帳
あごじゅうろうとりものちょう
15 日高川
15 ひだかがわ分量:約29分
書き出し:金の鱗《うろこ》看月《つきみ》も、あと二三日。小春日に背中を暖めながら、軽口をたたきたたき、五日市街道の関宿の近くをのそのそと道中をするふたり連れ。ひょろ松と顎十郎。小金井までの気散じの旅。名代《なだい》の名木《めいぼく》、日の出、入日はもう枯葉ばかりだが、帰りは多摩川へぬけて、月を見ながら鰻でも喰おうというつもり。ひょろ松は、小金井鴨下村《こがねいかもしたむら》の庄屋の伜で、百姓をきらって家督を...