顎十郎捕物帳
あごじゅうろうとりものちょう
23 猫眼の男
23 ねこめのおとこ分量:約31分
書き出し:府中《ふちゅう》「……すみませんねえ。これじゃ冥利につきるようで身体がちぢみます」「やかましい、黙って乗っておれというのに」駕籠に乗っているのは、ついこのあいだまで顎十郎の下まわりだった神田鍋町の御用聞、ひょろりの松五郎。かついでいるほうは、もとは江戸一の捕物の名人で、今はただの駕籠屋。仙波阿古十郎あらためアコ長。相棒は九州の浪人くずれで雷土々呂進《いかずちとどろしん》こと、とど助。とど助はどうで...