勧善懲悪
かんぜんちょうあく
初出:「大阪文学」1942(昭和17)年9月、10月分量:約76分
書き出し:一ざまあ見ろ。可哀相に到頭落ちぶれてしまったね。報いが来たんだよ。良い気味だ。この寒空に縮《ちぢみ》の単衣《ひとえ》をそれも念入りに二枚も着込んで、……二円貸してくれ。見れば、お前じゃないか。……声まで顫《ふる》えて、なるほど一枚ではさぞ寒かろうと、おれも月並みに同情したが、しかし、同じ顫えるなら、単衣の二枚重ねなどという余り聴いたことのないおかしげな真似は、よしたらどうだ。……それに、二円貸せと...