「文学的饒舌」の感想
文学的饒舌
ぶんがくてきじょうぜつ
初出:「文学雑誌」1947(昭和22)年2月

織田作之助

分量:約12
書き出し:文学的饒舌織田作之助最近「世界文学」からたのまれて、ジュリアン・ソレル論を三十枚書いたが、いくら書いても結論が出て来ない。スタンダールはジュリアンという人物を、明確に割り切っているのだが、しかし、ジュリアンというのはどんな人物かと問えば「赤と黒」一巻を示すよりほかにスタンダールにも手はないだろう。ジュリアンを説明するのに「赤と黒」の何百頁かが必要だったわけだ。だから、三十枚の評論で結論が出る筈がな...
更新日: 2024/04/21
19双之川喜41さんの感想

 冒頭から ジュリアンソレルを 持ち出すのは 鬱屈した 心情が 無意識に 応援団を 求めあぐむ 証左の 様にもみえてしまった。ぎりぎりの 人生を 歩んできたと 見得を切るけど 皆さん ぎりぎり人生は ごく普通のことで 言い立てても 仕方がない。織田作は 自分自身では 創作に 対して なんとかせねば との 焦りは 多分に 持ち合わせては いたかもしれないけど より優れた 創作のために 遺された 時間が 余りにも 少なすぎたと 想った。

更新日: 2020/09/03
496b7f29770aさんの感想

「命をすりへらしていけばいいと思っている。」の一文の通り、命懸けで作品を作り上げていた織田先生の想いが綴られている。 新人に対する扱いは昔も今も変わらないことは残念でならない。 「世相」は続きを書く予定で、「競馬」もあれで完結しておらず、構想はあっても完結しないないだろう、と記されていた。(個人的には綺麗に終わったなと思ったが……) 「命をすりへらして」書いていたからこそ、名作たちが生まれたのは間違いないが、ヒロポンなどに頼らず、長生きして、「土曜夫人」を完結させ、「世相」を書き、年代ごとに変化に富んだ文学を発表してほしかったと、本当に今更ながら悲しくてたまらなくなる。