環礁
かんしょう
――ミクロネシヤ巡島記抄――
――ミクロネシヤじゅんとうきしょう――初出:「南島譚」今日の問題社、1942(昭和17)年11月分量:約98分
書き出し:寂しい島寂しい島だ。島の中央にタロ芋田が整然と作られ、その周囲を蛸樹《たこ》やレモンや麺麭《パン》樹やウカルなどの雑木の防風木が取巻いている。その、もう一つ外側に椰子《ヤシ》林が続き、さてそれからは、白い砂浜——海——珊瑚礁《さんごしょう》といった順序になる。美しいけれども、寂しい島だ。島民の家は西岸の椰子林の間に散らばっている。人口は百七、八十もあろうか。もっと小さい島を幾つも私は見て来た。全島...