幕末維新懐古談
ばくまついしんかいこだん
42 熊手を拵えて売ったはなし
42 くまでをこしらえてうったはなし分量:約12分
書き出し:こういうことが続いていたが、或る年、大分大仕掛けに、父は熊手《くまで》を拵え出しました。鳥の市でなくてならないあの熊手は誰でも知っている通りのもの。真ん中に俵が三俵。千両|函《ばこ》、大福帳、蕪《かぶ》、隠れ蓑《みの》、隠れ笠《がさ》、おかめの面《めん》などの宝尽くしが張子紙で出来て、それをいろいろな絵具《えのぐ》で塗り附ける。枝珊瑚などは紅の方でも際立《きわだ》ったもの、その配色の工合で生かして...